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越後長岡を中心にローカルな食べ物やネタをレポートするB級ブログ
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先日、暇つぶしに明治時代の文献を漁っていたら、東京府赤坂区青山(現・東京都港区青山)にあった「学稼園」という種苗会社?が発行した『種苗定価一覧』(明治30年1月刊行)という当時の種苗カタログを発見した。

以前「食育の父」とも言われる明治の小説家でジャーナリストでもあった村井弦斎が書いたグルメ小説『食道楽』の作中で「大型の巾着茄子」の料理法が紹介されてるのを読んで以来、「明治の頃は長岡巾着茄子のような大型の巾着茄子は割と一般的なものだったのではないか?」と仮説を立ててた俺は、あわよくばその仮説を証明する手掛かりになるような情報はないかと期待に胸を膨らませて(Eカップくらいに)カタログを開いた。




すると・・・





ジャン!

あった!あったよ!!



『形、巾着の如く菱円形をなし至って豊産なり。大なる物は一個百二三十匁内外に達し、味良く質佳なり』

百二十匁=450gだから、長岡巾着茄子と同じくらいのサイズ。

長岡に巾着茄子が伝わったのは、明治15年に田上から長岡の中島に嫁に来た人が巾着茄子の種を持ってきたのが始まりだとどっかの寺の過去帳にあるらしいので、年代的に直接のルーツかどうかはわからない。

その後、他にも明治当時の農業書や料理本等も調べてみたら「巾着茄子」の名前が出てくる出てくる。

調べた中で巾着茄子の名前が出てくる文献でもっとも古いのは明治24年の物。

長岡中央青果の鈴木会長によると江戸時代の浮世絵師・喜多川歌麿の絵にも「巾着茄子」らしき茄子が描かれているものがあるという。


もしかして、これか?



子供入れて左から3人目のおねえちゃんが、りんごを剥くように黒い皮の茄子を剥いているけど、この絵じゃこれが巾着茄子なのか丸茄子なのか、正直判別不能だわな。

*鈴木会長に確認した所、この絵じゃなくてもっとはっきりと幅広の茄子が描いてある絵のようです。

でも、もしそれが本当ならこの長岡の地に幻の江戸野菜の一つが残っているということになるかもしれない。

いやー、ロマンだねぇ。



ちなみに上のカタログ画像の巾着茄子の左隣にある「佐土原長茄子」は白根の「えんぴつナス」豊栄の「やきなす」のルーツとなった茄子です。

他にもこのカタログをよく調べてみたら、今各地で在来種とか伝統野菜とか言われている野菜のルーツとなる野菜がいろいろ載っているかもしれない。



ついでにもう一つ・・・

このカタログのトウガラシ類の項目に「かぐらなんばん」によく似たイラストがあった。



上の図の左側のイラストを見てください。(クリックで拡大します)

長岡野菜のひとつ「かぐらなんばん」にそっくりじゃないだろうか?


「かぐらなんばん」と同じものが、上越の妙高周辺では「ブタコショウ」、長野の北信地方では「ボタコショウ」もしくは「ボタンコショウ」と呼ばれてる。

なので僕は北前船かなんかで「かぐらなんばん」が直江津に伝わり、やがて魚沼から山古志方面、そして妙高から北信地方方面へと伝播していったんじゃないかと仮説を立てていたんだけど、上のイラストには思いっきり「洋種」って描いてあるなぁ・・・

まあ明治以降に伝来したんだとしても不思議じゃないけど。



それでは他に巾着茄子の記述をみつけた文献をご紹介。


『茄子の栽培(明治24年4月刊行・桂栄著)』


巾着茄子は丸形にして大に種子少なく味わい佳良にして優れり。その他早生茄子、鳥飼(うぐい)茄子、奈良漬茄子、山茄子等枚挙にいとまあらず。要するに本邦種は丸形と長形との二種あり。各大小あり早晩あり。よろしく良種を選びて作るべし」



『実験茄子栽培法(明治25年刊行・小倉和作著)』


「茄子はその種類甚だ多く、一々これを列挙するあたわずと言えども、就中その肉の最も美に、その収穫の最も多く、その調理において最も便利なるもの数種を左に(ここでは下に)記述すべし。
最も永く本邦において栽培し、その名高く且つ多く伝播するもの(有名で広く栽培されているもの)は、丸茄子・銀茄子(白茄子のことらしい)・巾着茄子・百結茄子・早種茄子等にして、近来の舶戴にかかるものは、アーレー・ロングパープル、ブラック・プリンス、ニューヨーク・インブルーブドパープル、ラージ・ブラックペキン、水茄子、大丸茄子、スカーレット・フルーテット等にして、そのなか最も収穫の多きは本邦在来種にては丸茄子・早種茄子・巾着茄子等にて。舶来種にてはラージ・ブラックペキン、ニューヨーク・インブルーブドパープルなり」



『食道楽・秋の巻(明治36年刊行・村井弦斎著)』第二百七十話「茶碗鮨」


お登和嬢「それは鍋田楽と申すのです。大きい巾着茄子の皮を剥いて輪切りにし、アク出しをして油でよくいためて置きます。別に味噌を摺って味醂と砂糖を混ぜて裏漉しにして、今の茄子をその中に入れて焦げ付かないように掻き回しながら暫く煮たものです。茄子にはちょいとお手軽な料理が御座いますよ。今のように輪切りにした茄子を生のまま酢と醤油と少しの芥子を交ぜたものの中へ一晩漬けて置くと翌日は結構戴けます。それから一口茄子を皮のまま生醤油へ一晩漬けて置いて翌日食べてもよろしゅう御座います」
小山「一口茄子は何にしても結構ですね。秋茄子を嫁に食わせるなと云った位ですから好い味を持ったものです。私は一口茄子の芥子漬けが大層好きですが、あれは何で拵えます?」


>秋茄子を嫁に食わせるなと云った位ですから好い味を持ったものです。

この回の次の回で、お登和の兄の中川がさっそく「秋茄子は妊婦の体に悪いから食わせるなという親切心で言ってる諺だ」と反論している。

百年以上前から「秋茄子は嫁に食わすな」のことわざには二通りの解釈が言われていて、今だに答えが出てないんだね~。




『日本料理法(明治40年11月・赤堀峯吉等著)』


「茄子にもいろいろ種類がありまして、長茄子、巾着茄子、青茄子、卵茄子等あります。いずれも普通惣菜にしては甚だ重宝の材料であります」

赤堀峯吉(初代)は明治15年に日本で最初の料理学校『赤松割烹教場』(現・赤松栄養専門学校)を作った人。

ただこの本が刊行された当時90歳を超えたくらいの年齢なので、どれだけ著述に関わっていたかは不明。



『茄子と大根と蕪と(明治43年6月刊・梅原寛重著)』


この本の茄子栽培法にある害虫対策のうち、アブラムシ対策法は非常に危険。

苛性ソーダ(硫酸・塩酸並みに劇薬)に樟脳(防虫剤)を混ぜて噴霧しろとか、化学的知識がそんなになくてもヤバそうだってことぐらいはわかる。

昔の書籍には、時々こういった地雷的豆知識が紛れ込んでいるので注意しましょう。



『新潟県農事試験場・明治44年刊行』(所在地:長岡市)


長岡市にある現在の新潟県農業試験場の前身(だと思う)施設の資料。

巾着茄子の名前が見える。

この頃は奨励品種だったのかな?



最後に、もうひとつ見つけた明治の種苗カタログから。

『種苗営業案内・明治44年秋季・45年春季号(明治44年7月刊行 薄井園)』


「形円大。もっとも巾着の如く皺を生ず。味甘美佳良すこぶる豊産。本邦丸茄子の良種にして、その偉大なる清国丸茄子に劣らず」


晩成巾着茄子ってことは、長岡巾着茄子とはまた違う大型の巾着茄子の品種だな。


まとめるとやっぱり巾着茄子は明治の頃までは、少なくとも関東甲信越及び東海地方の範囲で古くから広く栽培されていた品種のようです。

(甲信越地方には純粋種の『長岡巾着茄子』の他に『小布施丸茄子』『魚沼巾着茄子』等の丸茄子との交配種が残っている)

それがいつの間にか大正年間以降に淘汰され、今では純粋な大型の巾着茄子は長岡に伝来する『長岡巾着茄子』の一品種しか残っていない。

つまり『長岡巾着茄子』は今では非常に貴重な茄子の品種だと言える。


僕はそんな貴重な『長岡巾着茄子』を、これからも精一杯守り続けていきたいと思います。




どう?こんな感じで最後まとめたら、かっこいいかな?かな?

拍手[1回]

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ほほぅ
巾着なすって、他の地域にも似たものが
あるのかな、と思ってましたが、
この辺でしか食べられてないんですね。
さすが茄子の作付け面積全国1位の新潟県。
今年の夏も楽しみです。

ところで突然、アカデミックなネタを
UPするなんて、どうかしました?
今更インテリ装っても遅いですよ
じんさんが変態なのは周知の事実なんで
(^m^プッ
NORI URL 2009/06/15(Mon)22:11:19 編集
そうなんです
巾着なすの純粋種は今や長岡にしか残ってないんですよ。
他に丸ナスとの混血種なら小布施丸ナスとか魚沼巾着ナスとかあるんですけどねー。

突然アカデミックなネタをUPしたのにはわけがあります。
それは僕が実はインテリだからです。
嘘です。

てゆうかたまにはちゃんとこうゆうネタをUPしないと、仕事まじめにやってないんかと思われそうな気がしたからですたい。

あと、NORIさんに変態呼ばわりされるのはすごく心外です。
一緒にしないでください。 
じん 2009/06/15(Mon)22:23:51 編集
アカデミック
アレな記事とアカデミック記事のギャップがたまりません。
こういう文献は、市場に残っているんでしょうか。いいですね。
ニュー本間 URL 2009/06/19(Fri)22:59:57 編集
残念ながら
市場にはこんな文献残ってません。
図書館のデータベースにありました。
じん 2009/06/19(Fri)23:33:36 編集
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