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ちょっと思い出したことがあるので、また忘れないうちに書いておこうと思う。
10年くらい前、当時滋賀県大津市に住んでいた友人のところに遊びに行ったときのことだ。
琵琶湖一周ドライブとかしたけど、友人も地元民になって日が浅かったこともあり、滋賀のお遊びスポット(変な意味ではない)を調べるにも当時インターネットは普及しておらず、「るるぶ」は頼りにならず、結局車で適当に流しただけで終わったので、結局あんまり楽しめなかった。
が、事件は最終日に起きたのだ。
新潟に帰る前、朝飯兼昼飯でも一緒に食うか、という話になり、友人が会社の人から美味いと聞いた焼肉屋に行く事にした。
大津駅近く(だったと思う)の古寂びた飲食街の中にある、なかなか路地裏チックな雰囲気の店だ。
たしか名前は「焼肉 麗門」だったと思う。
中に入るとまた時代を感じさせる佇まいだ。
最近流行の古民家やなんかよりも、よっぽどリアルに時代を感じさせてくれる。
ちょっと腰の曲がったご年配のオバチャン達も4~5人セットになっていた。
これも店の雰囲気に合わせた、すばらしいチョイス。
この店の古寂びた佇まいの中にギャル店員がいても、パーフェクトなまでにミスマッチだ。
店の雰囲気には満足しつつ、これもまた店の雰囲気をはずさないテーブルに着き、メニューを見る。
愕然とした。
「マゼラン焼肉ぅ!?なにこれ!」
「つか焼肉で世界一周って、なに?」
謎に満ちた言葉がメニューに溢れている。
我々は気づかぬうちに滋賀のワンダーゾーンに紛れ込んでたのかも知れない。
驚愕の時は去り、謎と疑問が各々の心を支配する。
この疑問を氷解させるには、お店のオバチャンに聞くのが手っ取り早いだろう。
「すいませーん、マゼラン焼肉ってなんですか?」
注文を聞きに来たオバチャンに尋ねると、
「ああ、うちはね!世界で一番最初に世界一周したマゼランに敬意を表して、焼肉で世界一周しようってやり方なんだよ!」
ますますわからない。
マゼランに敬意を表するのはいいとして、何で焼肉とマゼランが結びつくんだ?
関西のギャグは高度過ぎて難解である。
気を取り直して注文する。
オバチャンは奥に引っ込んだと思ったら、ジンギスカン鍋のような鉄板と網の乗せた七輪を持ってきた。
「うちはね!鉄板で焼いて表面を固めてから炭火で焼くんだよ!その方が肉汁が逃げないからね!」
意外な事に焼き方にもけっこうこだわってる。
ふむ、ちょっと見直した。
もしかしたら本当に美味いかもしれない。
タン塩とカルビが運ばれてきた。
オバチャンはマゼラン焼肉の初心者である我々に、親切にも説明しながら実演してくれるつもりらしい。
と、オバチャンいきなり「塩味のタン塩」と「タレ味のカルビ」を混ぜこぜに鉄板に投入!!
「!!!!!!!!!!!!!」
「くぁwせdrftgyふじこlp!!!!!!!!!!」
と、心の中で叫ぶも時すでに遅し。
更に、、、
「混ーぜ混ーぜマーゼラン焼ーき肉ぅ~♪」
肉混ぜながらヘンな歌唄ってる!!!!!!!
呆然としている我々4人組にオバチャンが更なる追い討ち。
「肉乗っけると白い煙が上がるやろ。煙は霧のロンドンゆうてな」
!!!!!!!焼肉で世界一周って、まさか!?
肉を運んで来ながらも、更に肉を混ぜ、唄い、そしてネタをかます。
「混ーぜ混ーぜマーゼラン焼ーき肉ぅ~♪」
「ほら、肉をボン!て乗せてジュルッ!て焼くからボンジュール」
くぅ、きつい、きつ過ぎるぜ!
全員のテンションがものすごい勢いで下がりまくっている!!!!
この攻撃は正直厄介だ!!
3度目の肉が運ばれてきた。
まだか・・・まだ攻撃が続くのか・・・・・・
ところがさすがにオバチャンも、この場のシラケきった雰囲気に気づいたのか、唄う声が段々か細くなってきた。
「混ーぜ混ーぜマーゼラン焼ーきに・・・♪」
なんかちょっと可哀相になった。
仕方ない、一緒に唄ってやるか。
みんな同じ気持ちだったらしく、一人が唄いはじめると、ほぼ同時にみんなが唄いはじめた。
シラケきった感じで。
「混ーぜ混ーぜマーゼラン焼ーき肉ー」
すると、途端にババア、元気になりやがった!!
「そやろ!いいやろ!ちょっと待ってぇな、な!!」
そう言って奥に引っ込むと、サニーレタスの葉をいくつか持ってきた。
「な!これでな!肉を包んで食べるんや!巻くと靴の形になるやろ!だからイタリアン」
し、しまったあああああああああああああ!!!!!!!!!!
くぅ、ヘタに情けをかけるべきではなかったか!
ここでそう来るとは・・・・・・
どうやらサニーレタスを巻いた様子がイタリア半島がブーツの形に似ているところと掛けているらしいが、靴の形になってねえYO!
メニューで確認すると、どうやら次の『ローマの休日(ソフトクリーム)』でようやくゴールらしい。
ここまで来たら最後まで行くしかない。
世界一周達成を目前にして2名ほど脱落した。
俺ともう一人で、いよいよ最後の難関『ローマの休日』に挑む!!
フフッ、武者震いが止まらねえぜ・・・
「すいませーん、ローマの休日2個ください!」
「え?・・・ちょ、ちょっと待ってて」
・・・なぜか慌てた様子で外に飛び出していくオバチャン。
・・・何その慌てっぷり?
不安がとまらねぇ・・・
しばらくするとオバチャンが戻ってきた。
「はいこれ、ローマの休日!」
手渡されたそれは、想像していた物とは、まるで別物だった。
100円ぐらいの、ソフトクリームとは名ばかりのアイスクリームを思い出していただきたい。
あのアイスの、やたらズングリしたT字型のコーンといったら判るだろうか?
あの手で持つコーンの上に、同じくコーンで出来た高さ約5cmくらいのキャップ被さっている。
思わず厨房入り口の辺りの棚に置いてあるソフトクリームの機械を見つめた。
よくあるレバーを引いて出てくるクリームを、コーンで回しながら受け止めて、とぐろを巻かせて「普通のソフトクリーム」を作るあの機械だ。
しばらくソフトクリームの機械と手元の『ローマの休日』を交互に眺めやりながら、
『え、あの、その・・・そこに置いてあるソフトクリームを作る機械は・・・何? え、もしかして・・・飾り?』
動揺と困惑が抑えられない。
一緒に『ローマの休日』にチャレンジした友人を見ると、口の端を引きつらせている。
彼も内心の動揺を隠し切れていないようだった。
だがいつまでも動揺してはいられない。
意を決してコーンのキャップにかぶりつく。
・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!!!!
コーンの中には『空間』が広がっていた。
呆然とした。
上げ底ならぬ上げ蓋である。
試しにキャップを取り、手で持つコーンを真横から見ると、コーンの上にほんのわずか、辛うじてクリームの一部が飛び出している。
クリームといってもソフトクリームではない。
ただの黄色いバニラアイス。
俺が食いたかったのは『普通のソフトクリーム』だ。
これ、普通『モナカ』って言わないか?
つっこみたい、チカラいっぱいつっこみたい、小一時間つっこみたい
だが相手はお年寄りである。
思いっきりつっこんで、万一の事があっては大変だ。
内心の葛藤を抑えつつ、ソフトクリームという名の『モナカ』をかじる。
意外と濃厚で美味いが、それでも敗北感は癒えない。
それに、よくよく考えると「焼肉で世界一周」と言いつつ
ヨーロッパしか行ってない!!
それも3カ国だけ!!!!(英国・おフランス・伊太利亜)
・・・く、今回は俺の負けだ。
だが、、、次に来た時は負けないぜ!!m9(´・ω・)
俺はリベンジを誓った。
そして10年余りの時が過ぎた・・・
まだ行ってません。
だって滋賀まで行くのめんどくさいんだもの。
片道5時間掛かるし高速代も馬鹿にならないし。
友人も滋賀から引っ越しちゃったし。
意外にも肉は結構美味かったんだけどね。
でも来年初夏に京都まで賀茂茄子作りの名人の畑を見に行くかもしれないから、うまくいけば寄れるかもしれない。
だけど一人で行くわけじゃないから寄るの難しいかもな~。
でもなんとか一緒に行くメンバーをたぶらかして説得して寄りたいと思います。
焼肉麗門 JR石山駅前店
http://gourmet.yahoo.co.jp/0005067679/0005858163/ktop/
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仕事の事はあんまり書いてないです。
「酒の進むこと風の如く、
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鯨飲すること火の如く、
泥酔すること山の如とし」
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